学校に伝えたら、こう返ってきた。双方に言い分があります。ふざけていただけのようです。その程度のことは、どこの学校にもあります。
納得できない。けれど、こちらも確信が持てない。これは、いじめと呼んでよいことなのだろうか。
そこで足が止まってしまう方に、私がまずお話しするのは条文の話です。いじめに当たるかどうかは、学校と保護者のどちらの感覚が正しいかで決まるものではありません。法律に書かれた要件に当てはまるかどうかで決まります。
法律が定めている「いじめ」
いじめ防止対策推進法2条1項は、こう定めています。
この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
要素は3つです。
- 誰から誰へか:同じ学校に在籍しているなど、一定の人的関係にある他の児童等から
- 何をされたか:心理的または物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)
- どうなっているか:その行為を受けた側が、心身の苦痛を感じている
これが揃えば、法律上の「いじめ」です。
定義に書かれていないこと
学校とのやりとりで話がかみ合わないとき、効いてくるのは、条文に書かれていないほうかもしれません。
加害の側のつもり
「いじめるつもりはなかったそうです」「じゃれ合っていただけです」。
条文に、加害の側の意図は出てきません。書いてあるのは、影響を与える行為があったことと、受けた側が苦痛を感じていること。この2つだけです。悪意があったかどうかは、要件になっていません。
文部科学省の「いじめの防止等のための基本的な方針」も、けんかやふざけ合いに見えるものについて、その背景にある事情を調査したうえで、児童生徒が感じている被害性に着目して判断する、という考え方をとっています。
回数
「一度だけのことです」と言われることもあります。
条文に「継続的に」「繰り返し」といった言葉はありません。一回の行為でも、要素を満たせば定義に当たります。
けがの有無や、行為の重さ
定義にあるのは「心理的又は物理的な影響を与える行為」で、程度による限定はついていません。物理的なものに限られておらず、心理的な影響だけでも含まれます。
どちらが先に手を出したか
双方に行為があったとしても、それだけで一方がいじめに当たらなくなるわけではありません。それぞれの行為について、要素を満たすかを見ていきます。
「心身の苦痛を感じている」をどう伝えるか
定義の中心は、お子さんが心身の苦痛を感じているかどうかにあります。これは外から見えません。
だから学校に伝えるときは、お子さんの状態が分かる形にしておいたほうがいいと思います。休んだ日と行きしぶった日。眠れない、食べられないといった変化。本人が話したことばは、言い換えずに、言ったとおりに書き留めてください。何をどう残すかはいじめに気づいたとき、まず残しておきたい記録にまとめました。
保護者の方が苦痛を訴えても、学校から「本人はそう言っていません」と返されることがあります。家では言えても学校では言えない、その逆もあります。話してくれないときの関わり方は子どもがいじめを話してくれないとき、親にできることをご覧ください。
定義に当たると、学校側に何が生じるか
法律上のいじめに当たる場合、学校には義務が生じます。
同法23条2項は、通報を受けたときのほか、在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときにも、速やかにいじめの事実の有無の確認を行うための措置を講ずるものと定めています。確認された場合には、被害を受けた児童等とその保護者への支援、いじめを行った児童等への指導とその保護者への助言を継続的に行うことも定められています(同条3項)。
「いじめに当たるかどうか」は、呼び方の問題ではありません。学校に何を求められるかが変わります。
学校に伝えたのに状況が変わらない場合は学校が動いてくれないときにできることを、生命・心身・財産への重大な被害の疑いがある場合や、相当の期間の欠席が続いている場合はいじめの「重大事態」とは何かをご覧ください。
当てはまってから、どうするかを選ぶ
定義に当たるからといって、ただちに強い手続きをとらなければならないわけではありません。
法律の定義は、学校が事実を確認し、支援を始めるための入口です。そこから先、何をどこまで求めるかは、お子さんの状態やご家庭の事情によって変わります。「いじめとして扱ってほしいけれど、大ごとにはしたくない」というご希望も、よくうかがいます。
まず定義に当たるかを確かめ、そのうえで対応の仕方を選ぶ。順番はこれで十分だと思います。
ご相談で扱えること
この段階でのご相談もお受けしています。
- 起きたことを条文の要素に当てはめて、法律上のいじめに当たりそうかを一緒に検討する
- 学校に伝える内容を、事実と要望に分けて整理する
- 学校の説明が、条文の求めるものに沿っているかを確認する
- 学校への申入書を作成する、面談に同席する
「これをいじめと呼んでよいのか分からない」という状態のままで構いません。お話をうかがった結果、定義には当たらないという見立てになることもあります。その場合でも、学校に何を求められるかは別に検討できます。
対面・電話・オンラインでのご相談は30分5,500円(税込)、メールでのご相談は初回無料です。これまでの経過をうかがったうえで、とり得る方法をご説明します。