お子さんからいじめの話を聞いたとき、まず何をすればよいのか。学校に伝えるべきか、相手の家に連絡すべきか、しばらく様子を見るべきか。迷われる方が多いところです。
どの道を選ぶにしても、共通して役に立つのが記録です。ご相談をお受けするとき、私が最初にうかがうのも「いつ、何がありましたか」で、そこに答えられる材料が手元にあるかどうかで、その日にご説明できる範囲が変わります。
記録が効いてくる場面
いじめの問題では、当事者の言い分が食い違います。「そんなことはしていない」「ふざけていただけだ」という反応は珍しくありません。
そのときに、いつ・どこで・誰が・何をしたのかを示すものがあると、話の出発点が変わります。記録がないと、事実の確認そのものに時間がかかり、その間に本人の記憶も薄れていきます。
学校がいじめの事実確認を行う際にも(いじめ防止対策推進法23条2項)、具体的な情報があるほど調査が進みます。
残しておきたい記録
1. 出来事のメモ
いちばん作りやすい記録です。次の項目を、分かる範囲で書き留めておきます。
- いつ(日付・時間帯)
- どこで(教室、廊下、部活動、通学路など)
- 誰が(相手の名前。分からなければ「同じクラスの男子2名」などでも構いません)
- 何をされたか
- そのとき周囲に誰がいたか
- お子さんがどう感じたか、その後の様子
書いた日付を必ず入れてください。 後から思い出して書いたものより、出来事の直後に書いたものの方が、記録としての意味が大きくなります。
お子さん本人に書いてもらう必要はありません。話を聞いた保護者の方が、聞いた内容として書いておく形で構いません。
2. スマートフォンの画面
SNS、グループチャット、メッセージアプリでのやりとりは、消えてしまいます。相手が削除する場合もあれば、機種変更で失われる場合もあります。
気づいた時点で、次の形で残してください。
- 画面のスクリーンショットを撮る
- 投稿者のアカウント名と投稿日時が、画面に写っている状態で撮る
- 前後の会話も含めて撮る(一部だけだと、何の話か分からなくなります)
- スクリーンショットは別の場所(クラウド、パソコンなど)にも保存しておく
投稿を削除させたい場合でも、削除の前に記録を残しておく必要があります。消してしまうと、後から内容を確認できません。
3. 身体に残ったもの
けがやあざがある場合は、写真を撮っておきます。日付が分かるようにし、定規など大きさの分かるものを一緒に写すと、状態が伝わりやすくなります。
痛みや体調不良があるとき、また眠れない・食べられないといった状態が続くときは、医療機関を受診してください。診断書や診療の記録は、被害の内容を示すものになります。受診の際、いじめが背景にあることを医師に伝えておくと、その旨がカルテに残ることがあります。
4. 学校とのやりとり
学校に相談した場合、その記録も残しておきます。
- いつ、誰に、どのような方法で(面談・電話・連絡帳)伝えたか
- 学校からどのような説明があったか
- 学校がどう対応すると言ったか
面談の後に、内容を確認するメールや連絡帳を送っておくと、やりとりが形に残ります。「本日はお時間をいただきありがとうございました。○○について調べていただけるとのことでしたので、よろしくお願いします」。この程度で十分です。
5. 欠席・遅刻の記録
学校に行けない日が続いている場合、その日数と経過も記録します。
いじめ防止対策推進法28条1項は、いじめにより児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあるときを「重大事態」と定めており、この場合、学校の設置者または学校は調査を行うものとされています。欠席の状況は、この判断に関わる事実です。仕組みについてはいじめの「重大事態」とは何か|調査を求めるときの手続きに書きました。
記録するときに気をつけたいこと
推測と事実を分けて書く。 「たぶん○○さんが仕組んだと思う」といった推測は、事実として書くのではなく、推測だと分かる形で書き分けておきます。事実と推測が混ざると、記録全体の信頼性が下がります。
お子さんに問い詰めない。 詳しく聞き出そうとするあまり質問を繰り返すと、お子さんが話すこと自体をためらうようになります。話してくれた範囲を書き留め、話せるタイミングを待つほうが、結果的に多くのことが分かります。関わり方は子どもがいじめを話してくれないとき、親にできることに書いています。
相手の子どもの情報を広く共有しない。 記録は必要ですが、それをSNSに書いたり、他の保護者に広く伝えたりすると、別の問題が生じます。記録は手元に置き、必要な相手にだけ示してください。
何も残っていない場合
ここまで記録の話をしてきましたが、何も残っていないから相談できない、ということはありません。
お話をうかがう中で、学校に確認すれば分かること、相手方に照会できること、これから残せるものが見つかることは多くあります。今の時点で何があるかを一緒に確認するところから始められます。
メールでのご相談は初回無料、対面・電話・オンラインでのご相談は30分5,500円(税込)です。手元にあるものをそのままお持ちください。整理は一緒にします。