学校にいじめを伝えたけれど、十分に調べてもらえていないと感じる。あるいは、学校の説明に納得できない。そうしたとき、「重大事態」という言葉を目にすることがあります。

いじめ防止対策推進法が定めている仕組みで、これに当たる場合、学校や教育委員会には調査を行う義務が生じます。

この記事は、調査を求めるまでのことです。調査が始まってからのことはいじめ重大事態の調査が始まったらにまとめました。

以下で「ガイドライン」と書いているのは、文部科学省の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(2024年8月改訂)のことです。

重大事態とは

いじめ防止対策推進法28条1項は、次の2つの場合を重大事態としています。

一 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき

二 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき

前者を「生命心身財産重大事態」、後者を「不登校重大事態」と呼ぶことがあります。前者の例として、文部科学省の「いじめの防止等のための基本的な方針」は、自殺の企図、身体の重大な傷害、金品等の重大な被害、精神性の疾患の発症を挙げています。

いじめを受けた疑いのあるお子さんが転校した場合や、私立の小中学校・高校を退学した場合も、生命心身財産重大事態に当たることが十分に考えられる、とガイドラインは書いています。欠席していないから不登校重大事態に当たらない、という理由で詳しい調査をしない扱いにならないよう、注意も促しています。

「疑いがあると認めるとき」という書き方

条文を読むうえで大切なのは、**「疑いがあると認めるとき」**という部分です。

いじめがあったと確定していることは、要件になっていません。重大な被害が生じた疑い、あるいは欠席を余儀なくされている疑いの段階で、調査を行うものとされています。

「まだいじめかどうか分からないので調査できない」。ときどきうかがう説明ですが、これは条文の建て付けと逆です。調査は、分からないことを確認するために行うものだからです。

「相当の期間」の目安

不登校重大事態の「相当の期間」は、年間30日が目安とされています。

ただし、これは目安です。ガイドラインは、お子さんが一定期間続けて欠席していて、その原因にいじめが考えられる場合には、欠席が30日に達する前から、学校が設置者(公立なら教育委員会)に報告・相談するものとしています。重大事態に当たるかどうかの判断も、設置者とよく協議して丁寧に行うこととされています。

保護者からの申立て

できます。

ガイドラインでは、児童生徒や保護者から、いじめにより重大な被害が生じたという申立てがあったときは、その時点で学校が「いじめの結果ではない」あるいは「重大事態とはいえない」と考えたとしても、重大事態が発生したものとして報告・調査に当たるとされています。

申立てに「いじめ」という言葉が入っている必要もありません。人間関係が原因で心身に異常や変化が出ている、という訴えのように、「いじめ」という言葉を使わない申立ても、ここに含まれるとされています。

学校の判断が先にあって、保護者がそれに従う、という関係ではありません。申立てがあれば、そこから手続きが始まります。

申し立てる際は、口頭だけでなく書面で行い、控えを残しておいてください。いつ、誰に、どのような内容を伝えたかが記録として残ります。手元にどのような記録を残しておくとよいかは、いじめに気づいたとき、まず残しておきたい記録にまとめています。

調査を望まないとき

お子さんの負担を考えると、調査はしてほしくない、と思われることもあると思います。

ガイドラインは、被害を受けた側が望まないことを理由に、重大事態として取り扱わないことは決してあってはならない、としています。そのうえで、進め方のほうを工夫することが考えられるとしています。調査したことや調査結果を外に明らかにしないまま行う。関係する児童生徒への聞き取りをせず、学校にある記録の確認から事実関係を整理する。調査報告書を公表しない。こうした工夫ができることを、学校や設置者は丁寧に説明する必要がある、とされています。

調査の主体

法律上、調査を行うのは学校の設置者またはその設置する学校です(同法28条1項)。

公立学校であれば、設置者は市町村や都道府県の教育委員会です。教育委員会が主体となる場合と、学校が主体となる場合があり、どちらで行うかは設置者が判断します。調査は、学校や設置者の下に設けられる組織が行い、事案によっては第三者を加えた組織になります。

この調査は、民事・刑事・行政上の責任追及を直接の目的とするものではありません。ガイドラインは、事実関係をできる限り明らかにし、その事態への対処と同種の事態の防止を図るためのものだ、としています。相手方に賠償を求めるかどうかは、調査とは別に考えることになります。

調査組織の構成、調査の前に受ける説明、報告書の受け取り方、再調査については、いじめ重大事態の調査が始まったらに書きました。

ご相談で扱えること

重大事態の手続きは、保護者の方がご自身で進めることもできます。そのうえで、弁護士にご相談いただくと、次のような点でお手伝いができます。

  • 今の状況が重大事態に当たりそうか、どの類型に当たるかを一緒に検討する
  • 申立ての書面を作成する
  • 学校や教育委員会との面談に同席する
  • 調査と並行して、あるいは調査の後に、相手方への請求を検討する

まだ学校に何も伝えていない段階でも、ご相談いただけます。

対面・電話・オンラインでのご相談は30分5,500円(税込)、メールでのご相談は初回無料です。お子さんの状況とこれまでの経過をうかがったうえで、とり得る方法をご説明します。