朝になるとお腹が痛いと言う。持ち物がなくなっている。スマートフォンを見る顔つきが変わった。何かあると感じて聞いてみても、返ってくるのは「べつに」「なんでもない」。

心配なのに、肝心のことが分からない。しかも急かせば余計に口を閉ざしてしまいそうで、どう踏み込めばよいのか分からなくなります。いじめのご相談では、よくうかがう状況です。

話さない理由は、親子関係とは別のところにある

お子さんが話さないのは、親を信頼していないからではないことがほとんどです。

私は弁護士になる前、保育園で保育士として働いていました。転んで泣いていた子が、迎えに来たお母さんの顔を見たとたん「なんでもない」と言う。そういう場面を何度も見ました。年齢が上がるほど、この傾向は強くなるように思います。

話さない理由として、よくうかがうのは次のようなものです。

  • 親を心配させたくない。自分のことで親が悲しんだり怒ったりするのを見たくない
  • 大ごとにされたくない。学校に乗り込まれて、かえって立場が悪くなることを恐れている
  • 言葉にできない。何が起きているのかを自分でも整理できていない
  • 自分が悪いと思っている。やられる側にも理由があると考えてしまっている
  • 告げ口だと思っている。人のことを言うのは良くないと教わってきた

どれも、育て方の良し悪しとは関係のないところにある理由です。「うちは何でも話す子だったのに」と感じておられる方も、どうか、ご自身を責めないでください。

質問を重ねると、かえって閉じることがある

心配のあまり、問いを重ねてしまうことがあります。誰にされたのか。いつからなのか。どうして言わなかったのか。

問い詰める形になると、お子さんの側では「責められている」と受け取られます。とくに「どうして言わなかったの」は、事実を知りたいだけの問いかけであっても、責める言葉として届いてしまいやすい。

急いで聞き出さなくても、できることがあります。

聞き出す以外にできること

1. 「いつでも聞く」とだけ伝えておく

その場で答えを求めず、扉を開けたままにしておく方法です。

「何かあったら聞くよ。話したくなったときでいいよ」と伝えて、そこで止めておく。すぐには話さなくても、話す準備ができたときに戻ってこられる場所になります。

「あなたが悪いわけじゃない」と一言添えておくのも、後から効いてくることがあります。

2. 見えていることを、そのまま記録しておく

お子さんが話さなくても、周りで起きていることは記録できます。

  • 持ち物の破損や紛失(日付と、なくなったもの)
  • 服の汚れ、体のあざや傷
  • 学校を休んだ日、行きしぶった日
  • 体調の変化(腹痛、頭痛、眠れない、食べられない)
  • 支出の変化(お金を持ち出している、使途が説明できない)
  • 表情や口数が変わった日と、その前後にあったこと

写真が撮れるものは撮っておきます。日付が残るように、スマートフォンでそのまま撮るのが簡単です。

これは、後で法的な手続きを考えるときの材料になるだけではありません。学校に相談するとき、「なんとなく様子がおかしい」と伝えるのと、「この2週間でこういうことが5回ありました」と伝えるのとでは、担任の先生の受け止め方が変わります。

残し方はいじめに気づいたとき、まず残しておきたい記録で詳しく書いています。

3. 話し相手を、親以外にも用意しておく

親にだけは知られたくない、という気持ちが働いている場合があります。親以外の入口を用意しておくと、そちらから話が出てくることがあります。

  • 学校のスクールカウンセラー、養護教諭(保健室の先生)
  • 祖父母、年の離れたきょうだい、いとこ
  • 習い事や塾の先生
  • 24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)、法務局の「子どもの人権110番」(0120-007-110)など、子ども本人が匿名でかけられる相談窓口

窓口の連絡先を、押しつけずにメモで渡しておくだけ、という方法もあります。

4. 本人が話さない段階での、学校への相談

「本人が何も言わないのに、学校に相談してよいのだろうか」と迷われる方が多くおられます。

相談して構いません。いじめ防止対策推進法23条2項は、学校が通報を受けたときのほか、在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときにも、速やかに事実の有無を確認するための措置を講ずるものと定めています。いじめがあったと確定していることは、学校が動く前提になっていません。疑いの段階で保護者から伝えることは、この仕組みの中に含まれています。

同法9条2項も、保護者は、その保護する児童等がいじめを受けた場合には、適切にその児童等をいじめから保護するものと定めています。お子さんに代わって動くことは、差し出がましいことではありません。

そのとき、「本人はまだ話していないので、本人に確認する前に配慮してほしい」と、伝え方についての希望もあわせて伝えておくとよいと思います。学校の動き方によっては、お子さんが「親が言ったせいだ」と感じてしまうためです。

学校に伝えたのに状況が変わらない場合は、学校が動いてくれないときにできることをご覧ください。

何も分かっていない段階でも、相談はできます

はっきりしたことが分からないうちに弁護士に相談してよいのか、と迷われるかもしれません。

この段階でのご相談もお受けしています。何が起きているか分からない状態で、何を記録し、学校にどう伝え、どこから確かめていくかを一緒に考える、というご相談です。お子さん本人にお会いせずに、保護者の方だけでお話をうかがうこともできます。

お話をうかがったうえで「いまは様子を見て、記録だけ残しましょう」とお伝えすることもあります。動くことだけが答えではありません。

お子さんが話す気になったときに、受け止められる準備が家の中にあること。私が大事だと思っているのはそこです。その準備のお手伝いなら、いまの段階からできます。

対面・電話・オンラインでのご相談は30分5,500円(税込)、メールでのご相談は初回無料です。