担任の先生に伝えた。話は聞いてもらえた。けれども、その後の状況が変わらない。何度か連絡したが「様子を見ています」という返答が続く。
いじめのご相談で、よくうかがう状況です。
学校が負っている義務
いじめへの対応は、学校の裁量に任されているものではありません。いじめ防止対策推進法23条が、やるべきことを定めています。
児童等からいじめの相談を受けた場合などには、学校への通報その他の適切な措置をとること(同条1項)。通報を受けたときは、速やかに事実の有無の確認を行うこと(同条2項)。いじめがあったと確認された場合には、いじめをやめさせ再発を防止するため、被害を受けた児童等やその保護者への支援、いじめを行った児童等への指導やその保護者への助言を継続的に行うこと(同条3項)。
必要があるときは、いじめを行った児童等を別の教室で学習させるなど、被害を受けた子が安心して教育を受けられるようにする措置をとること(同条4項)。保護者どうしの争いにならないよう、情報を共有する措置をとること(同条5項)も定められています。公立の小中学校では、市町村の教育委員会が、いじめを行った児童生徒の保護者に出席停止を命じる制度もあります(同法26条)。
「様子を見る」がこの事実確認や支援に当たるといえるかは、状況によります。ただ、事実確認をしないまま時間だけが過ぎている状態は、条文が想定しているものではありません。
こども家庭庁と文部科学省の「いじめの重大化を防ぐための留意事項集」(2025年11月)も、対応を「見守りましょう」「記録を取りましょう」といった抽象的な方針にとどめず、いつ、誰が、何を、どうするのかを決めて動くことを求めています。「様子を見ています」と言われたら、誰が、いつまで、何を見ているのかを聞いてみてください。
「解決した」と言われたとき
謝罪の場が設けられ、学校から「解決しました」と伝えられることがあります。
文部科学省の「いじめの防止等のための基本的な方針」(以下「基本方針」)は、いじめが解消しているといえるには、少なくとも2つの要件が必要だとしています。1つは、いじめの行為が止んでいる状態が相当の期間続いていること。この期間は、少なくとも3か月が目安です。もう1つは、その時点でお子さんが心身の苦痛を感じていないこと。これは、本人と保護者に面談などで確かめるものとされています。
謝罪があった日に解消、とはなりません。保護者に確認がないまま「解消」として扱われているようなら、そのことを学校に伝えてかまいません。
伝え方を変える
同じ内容でも、伝わり方は形によって変わります。
書面で伝える
口頭でのやりとりは記録に残りません。伝えたつもりでも、学校側の受け止めが違っていることがあります。
これまでの経過と、学校に求めることを書面にまとめて提出すると、内容が明確になり、記録としても残ります。特別な形式は必要ありません。日付、お子さんの学年とお名前、時系列の経過、求めること。これだけ書けば足ります。控えは必ず手元に残してください。
誰に伝えるかを変える
担任の先生だけに伝えている段階であれば、学年主任、生徒指導担当、教頭、校長に伝えることを検討します。
いじめ防止対策推進法22条は、学校がいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、複数の教職員や心理・福祉等に関する専門的な知識を有する者などにより構成される組織を置くものと定めています。担任個人の判断ではなく、この組織で対応すべき事柄だ、という整理になります。書面には、この組織で検討していただきたい旨を書き添えることができます。
基本方針は、教職員がいじめを発見したり相談を受けたりしたときは、速やかにこの組織に報告しなければならない、としています。特定の教職員が情報を抱え込み、組織に報告しないことは、同法23条1項に違反しうる、とも書かれています。担任の先生に伝えた内容が組織に上がっているかは、確かめてよいことです。
スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー
多くの学校に配置されています。お子さんの状態について第三者の見立てが加わると、学校の受け止め方が変わることがあります。
学校側に弁護士が同席するとき
学校との面談に、学校や教育委員会が相談している弁護士が同席することがあります。スクールロイヤーと呼ばれる立場です。
スクールロイヤーは、学校や教育委員会から依頼を受けて助言する弁護士です。保護者やお子さんの代理人にはなれません。学校の側に法的な助言をする人が同席している、と分かっていれば、面談で何を確かめ、何を持ち帰るかを整理しやすくなります。
学校の外の窓口
学校に伝えても状況が変わらない場合、外にも相談先があります。
教育委員会
公立学校の設置者は教育委員会です。学校の対応に問題があると考える場合、教育委員会に相談できます。
学校を飛び越えて連絡することをためらう方もいらっしゃいます。ただ、いじめ防止対策推進法は設置者にも役割を定めていて、相談先としてもともと想定されています。
重大事態としての申立て
お子さんの心身に重大な被害が生じている疑いがある場合、あるいは学校を欠席する状態が続いている場合、「重大事態」として調査を求めることを検討できます。この場合、学校や教育委員会には調査を行う義務が生じます。
詳しくはいじめの「重大事態」とは何か|調査を求めるときの手続きをご覧ください。
法務局
法務局では人権相談を受け付けており、調査や関係者への働きかけが行われることがあります。
弁護士会
弁護士会には、人権侵害の救済を申し立てる手続きがあります。弁護士会が調査し、人権侵害があると判断すれば、学校などに警告や勧告、要望を行います。法的な強制力はありません。
弁護士会によっては、弁護士があっせん人となり、話し合いによる解決を目指す手続き(和解あっせん)も設けています。
警察
暴行、傷害、恐喝、器物損壊など、犯罪に当たり得る行為があるなら、警察への相談も選択肢になります。いじめ防止対策推進法23条6項も、いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると認めるときは、警察と連携して対処するものと定めています。
相手方や学校の責任を問う
学校を通じた対応とは別に、いじめを行った児童生徒やその保護者に対して、直接責任を問うことを検討する場面もあります。
未成年者が他人に損害を加えた場合、その未成年者に責任能力がないときは監督義務者が責任を負うことがあり(民法714条)、責任能力があると判断される年齢であっても、保護者の監督に問題があった場合には保護者自身の責任が問われることがあります。
学校の対応そのものに問題があった場合は、公立学校であれば国家賠償法に基づく請求、私立学校であれば在学契約上の義務違反を理由とする請求を検討することもあります。公立学校の場合、請求の相手は学校を設置する地方公共団体で、先生個人に直接請求することは認められていません。
どこまで認められるかは、事実関係と手元にある証拠で大きく変わります。法律上のいじめに当たることと、損害賠償が認められることも同じではありません(「いじめ」と呼ばれないときに書きました)。ここに書いたのは、請求を検討する余地があるという段階までの話です。
時間の制限
不法行為に基づく損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効にかかります(民法724条)。生命または身体を害する場合は、前者が5年になります(同法724条の2)。
注意したいのは、「知った時」を、お子さん本人ではなく法定代理人である保護者の方が知った時点で判断する場合があることです。お子さんが成人するまで期間が進まない、というものではありません。
学校の責任を問う場合は、公立か私立かで根拠となる法律が変わり、期間の考え方も変わります。いつの出来事か、いつ知ったと評価されるかで扱いが違ってくるため、一律にはお答えできません。時期が気になる場合は、その点も含めてご相談ください。
行き詰まったと感じたら
次に何をすればよいかは、これまでの経過と、手元にある記録によって変わります。
弁護士が入ると、学校とのやりとりの窓口を代わることも、書面の作成をお手伝いすることも、面談に同席することもできます。ご依頼まで進まず、方針を整理するだけのご相談でも構いません。
対面・電話・オンラインでのご相談は30分5,500円(税込)です。メールでのご相談は初回無料です。